日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク
Japan NGO Network for CEDAW (JNNC)


CEDAW第29会期NGOブリーフィングでの
日本NGO発言内容
7月7日 ニューヨーク国連本部 第2会議場
(日本語版)

 
 JNNCを代表して発言いたします。JNNCは、この委員会に日本の女性たちの関心事項をお伝えするために活動してきた43のNGOからなる連合体です。
 最初に、本日、私たちが開催しましたランチタイム・ブリーフィングにおいでくださった委員の皆様に、お礼を申し上げます。その際に出された質問事項に対しては、現在、JNNCメンバーが書面で回答を作成しておりますので、この会合が終わるまでに、お配りしたいと思っています。
 では、日本の報告書に対する私たちのコメントを申し上げます。
T 総論

1.締約国の義務
  私たちNGOは、条約第2条(a)および(b)は、「遅滞なく」実行されるべきものと考えています。しかし、日本政府は、条約は、第2条における締約国の義務を「遅滞なく」ではなく、「漸進的」に満たすことを求めているにすぎないと述べています。この点について、委員会の見解をお尋ねします。



女性差別撤廃条約 第2条
 (a) 男女平等の原則が時刻の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定め、かつ、男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適切な手段により確保すること。
 (b) 女性に対するすべての差別を禁止する適切な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)をとること

  また、性教育やジェンダーフリー教育、自治体の条例作りなどで保守層からのバックラッシュが強まっています。女性差別を助長するような公人の発言などに対し、日本政府は毅然とした態度を取るべきです。
  さらに、日本では、意思決定過程における女性の数が非常に少ないので、意思決定過程における女性を増やすために、ポジティブアクションを含めた具体的施策を実施する必要があります。

2.選択議定書
日本政府は、選択議定書は、「司法権の独立」を侵す可能性があり、そのため、批准には慎重にならざるを得ないといっています。しかし、日本と同様の司法制度をとる国々が、すでに選択議定書批准をしています。日本政府に批准を強く要請してください。

3.女性に対する暴力
(ドメスティックバイオレンス)
  DV防止法が施行されましたが、同法では「配偶者からの暴力」を「身体的暴力」に限定し、「性的強要」や「心理的脅迫」を含まないため、そのような形態の暴力は、保護命令の対象になりません。また、同法では、恋人や元配偶者からの暴力に対する申立および被害者の親族や子どもの申立を認めていません。これらの点は、改正されるべきです。


DV防止法(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」)
  第1条 この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)からの身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。
  第2条 この法律において「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者(配偶者からの暴力を受けた後婚姻を解消した者であって、当該配偶者であった者から引き続き生命又は身体に危害を受けるおそれがあるものを含む。)をいう。

  さらに、日本政府は、刑法第177条の規定は、夫婦間レイプにも提供されていると述べています。しかし、1909年に同法が施行されて以来、この規定を用いて検挙された例は2件しかありません。

(戦時性奴隷制度("戦時慰安婦"問題))
  日本軍性奴隷制("戦時慰安婦"問題)について、日本政府は被害女性が強く求めている真摯な謝罪と補償は一切行っていません。日本政府が、手遅れになる前に、被害者及び被害者を代理する団体と問題の解決に向けた協議を行い、必要な措置をとるよう勧告することを、委員会に要請します。

4.社会保障および税制
  現在の社会保障と税制は女性を無収入もしくは低収入者に抑え、世帯主という「主たる家計保持者に依存する妻」という立場である事を奨励するような制度です。政府は、生活基盤整備をはかりながら、早急に社会保障および税制を見直し、性別役割分担を再生産しない仕組みづくりをすることが必要です。

5.司法システムにおけるジェンダー・バイアス
  司法の場において、検事や裁判官の態度を含むジェンダー・バイアスが、被害女性をさらに傷つけるという事態が生じています。例えば、強姦事件で被害女性の性体験・貞操観念が問題とされ無罪となった判決や、DV事件の裁判官による「女房が理屈を言えば殴る」という発言などがあります。司法関係者全般への性別役割分業や社会構造的性差別を含むジェンダーの問題について、教育や研修を行なうことが急務です。

U 各論(個別の団体による発言)
6.雇用・労働分野 (発言団体:ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク)
  私たちは、日本の大企業住友と日本国を相手に男女差別賃金是正の裁判をしている原告です。私の後ろに立っているのが、二人の原告です。1994年にNGOレポートを提出し、委員会を傍聴し、皆さんに励まされて男女賃金差別の是正裁判を始めました。
  しかし2000年7月、大阪地裁で、「男女別採用は憲法違反だが公序良俗違反ではない」として敗訴。明らかな男女別雇用管理の結果、同期同学歴の男女で、1カ月2000ドルの賃金格差があるにもかかわらず、国も企業も『格差の原因は男女差別ではなく採用区分の違いによるもの。男性は将来の幹部候補要員、女性は定型補助業務のために雇ったのであり、採用区分が違う。コースが違うことによる格差であり男女差別ではない』と主張し、大阪地裁判決もそれを容認しています。
  これは間接差別です。今年のILO総会で『コース別人事制度は、実際には性別を根拠とした間接的な区別を温存しており、それが、同一価値労働同一賃金の具体化を阻害している』と述べています。日本のコース別雇用は、男女差別の隠れ蓑です。経済大国日本で、女性が平等に働くために、少なくとも次の4つを実現しようとがんばっています。
  1.間接差別の禁止
  2.均等法の指針「雇用管理区分ごとに比較」の改定
  3.日本政府に国際条約を守らせ、「差別は遅滞なく是正」させること
  4.選択議定書の批准

7.マイノリティー女性 (発言団体:反差別国際運動日本委員会)
  反差別国際運動日本委員会を代表して、日本社会でその存在が見過ごされているマイノリティ女性に関する問題を取り上げたいと思います。
  女性差別撤廃条約は門地、民族的出自、国籍、市民権を問わず領土内に住む全ての女性に対する差別を撤廃するよう求めているにもかかわらず、日本政府はその締約国義務を認識しているようには思えません。
  日本では、被差別部落、先住民族アイヌ、沖縄、在日コリアンといったマイノリティ・グループに属する女性や、移住労働女性、人身売買された女性たちは、同じカテゴリーに属する男性よりも、そしてマジョリティの女性よりも、多くの困難に直面しています。しかし、マイノリティ女性の実態を示す公的なデータも、彼女たちの状況を改善するための政策も、ないに等しい状態です。私たちは、日本政府報告書からはマイノリティ女性に対する複合差別の視点が完全に欠落している事実を深く憂慮します。このような事態は、そのような女性たちの状況改善に向けた女性差別撤廃委員会と人種差別撤廃委員会との近年の共同作業の動きにも逆行しています。
  人身売買に関して言えば、現在の日本の法制度の下では、人身売買業者は不法就労斡旋の行政罰が適用されるに過ぎません。一方、人身売買の被害者は不法就労者として行政罰・刑事罰の両方が適用されます。結果として、人身売買されて性産業に従事する女性の権利と安全は、ほとんどの場合、守られていません。
  言うまでもなく、最も抑圧された女性の解放なくしてすべての女性の解放はありません。私たちは日本政府に対し、マイノリティ女性の実態について調査を行い、データを収集し、そうした人々の権利擁護と状況改善のための方策をとることを求めます。

8.婚外子差別、民法改正 (発言団体:なくそう戸籍と婚外子差別・交流会)
  私達は婚外子に対する戸籍続柄差別記載の撤廃を求めた裁判を支援している団体です。原告である田中須美子は婚姻届を出しませんでした。なぜなら、日本では結婚すると性別役割分業が妻に押し付けられパートナーと対等な関係を持つことが難しいからです。
  日本では、婚外子に対する法制度上の差別が今でも存在しています。婚外子を差別することを通して、婚外子を生んだ女性、これから生もうとする女性に対し、「子どもが差別されてもよいのか」と非難し,妊娠中絶に追いこみ、神経をやむなどの悲劇があとを絶ちません。婚外子への差別は女性を差別し、女性の生き方を強制するものです。
  今年の3月と6月には最高裁が民法の相続分に関する規定は合憲であるとの判決を出しました。
  戸籍における差別記載があるために、婚外子だと一目でわかってしまいます。そのため採用を拒否されるなどの差別が頻発しています。そのため差別記載の撤廃が急務となっています。同時に夫婦別姓導入などの民法改正も緊急課題です。


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